ソフトバンクグループは潰れるのか?2020年3月期第2四半期で真っ赤っかの大赤字計上

ソフトバンクグループが2020年3月期第2四半期で大きな赤字を計上しました。

社長の孫正義氏も「今回の決算はボロボロだ。真っ赤っかの大赤字で、まさに台風というか大嵐という状況だ」と述べるほどです。

そのため、ソフトバンクグループは倒産するのでは?との風潮の記事が増えていますし、ネットでもそのような投稿が増えています。

ソフトバンクは昔から負債がかなり多く、いつ倒産するのか?みたいなことを言われ続けてきた会社でもあるのでまたか。。。って感じもありますが。

そこで今回はソフトバンクグループが本当に潰れてしまうのか?について考えてみたいと思います。

先に結論からお話しておけば

すぐに倒産したりするような決算内容ではない
ってことです。

ソフトバンクグループ2020年3月期第2四半期の経営成績

まずは前提となる今回発表された大赤字となった経営成績の内容を1年前の同期間で比較してみましょう。

なお、経営成績の見方についてはこちらの記事も合わせて御覧ください。

2020年3月期第2四半期:売上高(連結)

売上高は以下のとおりです。

ほぼ横ばいの微減といった感じですね。

2020年3月期第2四半期4,651,724百万円
2019年3月期第2四半期4,653,853百万円
増減△2,129百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

もともとコンセンサス予想でも減収増益予想でしたから売上高はこんなもんかなってレベルです。

内訳でみるとソフトバンク事業は増収だったものの、スプリント事業、アーム事業、ブライトスター事業が減収となっています。


2020年3月期第2四半期:営業利益(連結)

営業利益は以下のとおりです。

こちらはかなり大きなマイナスとなりました。

金額だけ見るとびっくりするようなマイナスですね。

2020年3月期第2四半期△15,552百万円
2019年3月期第2四半期1,420,716百万円
増減△1,436,268百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

内訳で見るとソフトバンク事業とスプリント事業以外は営業損失となっており、かなり苦戦しているのがわかります。

※スマートフォンの方はスクロールしてお読みください。

ソフトバンクビジョン・ファンド/デルタファンド事業ソフトバンク事業スプリント事業アーム事業ブライスター事業その他
2020年3月期第2四半期△572,639百万円560,913百万円102,469百万円△26,802百万円△2,895百万円△46,348百万円
2019年3月期第2四半期632,434百万円524,112百万円193,328百万円141,242百万円△8,873百万円△25,116百万円
増減△1,205,073百万円36,801百万円△90,859百万円△168,044百万円5,978百万円△21,232百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

UberとWeWorkの未実現評価損失

特にマイナスが大きいのはソフトバンクビジョン・ファンド/デルタファンド事業ですね。

昨年はこの事業が一番利益を稼いでいたわけですから浮き沈みが激しい事業と言えるでしょう。

今回の第2四半期ではUberWeWorkに対する投資の未実現評価損失が537,932 百万円とかなり大きな比率を占めています。

未実現損失ですから一般の投資家における含み損みたいなものです。

PayPay事業への先行投資

その他も大きなマイナスを計上していますが、その大部分がPayPayによる部分です。

PayPay事業の2020年3月期第2四半期における売上高と営業利益は以下のとおりです。

売上高1,596百万円
営業利益△34,549百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

PayPayはキャンペーンを繰り返し行っています。

また、店舗にPayPayの導入してもらうために人員もかなり使っているようです。

私のところにも何度も営業が来ましたね。

テレビCMもすごいです。

対して売上は上がらない仕組みとなっています。

今の所、PayPayは加盟する際に加盟料決済手数料振込手数料などなにも手数料を取っていないんですよ。(通常の場合)

つまり、売上がほとんどあがりようがないのです。

まずは加盟店と利用者を増やすことを目指しているんですよね。

この手のビジネスは覇権をとってデファクトスタンダードになってしまえば、その後はチャリンチャリンモデル(お金が自動的に降ってくる)に突入ですからそれを目指しているのでしょう。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

2020年3月期第2四半期:税引前利益(連結)

税引前利益は以下のとおりです。

営業利益段階ではかなりのマイナスとなっていました。

しかし、実は税引前利益はそれなりのプラスとなっているんですよ。

前年比較すると少なくはなっているものの・・・

2020年3月期第2四半期1,116,712百万円
2019年3月期第2四半期1,402,089百万円
増減△285,192百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

これはアリババ株式先渡売買契約決済益に依る部分が大きいです。

1,218,527百万円が計上されています。

つまり、持ち株であったアリババ株の一部(73 百万株)を先渡売買契約した際の利益ってことですね。

ただし、持ち株の売却で大きな利益が出たというだけですから一時的なものですよね。

2020年3月期第2四半期:純利益(連結)

法人所得税を引いたあとの純利益は以下のとおりです。

2020年3月期第2四半期532,185百万円
2019年3月期第2四半期879,670百万円
増減△338,485百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

純利益の段階も一応プラスでは終わっています。

ただし、前述のように一時的に発生したアリババ株式先渡売買契約決済益が1,218,527百万円が加算された状態でのものですからその部分は差し引いて考えるのが良いでしょう。

ソフトバンクグループの2020年3月期第2四半期時点での財政状態

次は財政状態を見ていきましょう。

なお、財政状態の見方についてはこちらの記事も合わせて御覧ください。

2020年9月30日:資産

まずは資産です。

2020年9月30日36,848,701百万円
2019年3月31日36,096,476百万円
増減752,225百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

前期の決算日よりも資産は増えています。

大きく増えたのが現金及び現金同等物400,659百万円の増、使用権資産2,235,685百万円の増となっています。

逆に大きく減ったのが有形固定資産で1,110,499百万円の減となっています。

※使用権が増えて有形固定資産が減ったのは従来有形固定資産として計上されていたリース資産を使用権資産に振り替えしたことによるものです。


2020年9月30日:負債

次は負債です。

2020年9月30日28,225,075百万円
2019年3月31日27,087,272百万円
増減1,137,803百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

負債も増加していますね。

資産よりも多く増加しているのはちょっときになるところ。

ソフトバンクビジョン・ファンド/デルタファンド事業の外部投資家持分ですね。

453,918百万円増えています。

また、有利子負債が減ってリース債務が増えています。これは使用権の話と同じで会計処理が有利子負債としていたものをリース債務に変更になったことによるものです。

ソフトバンクグループの有利子負債

ソフトバンクは過去からずっとそうですが、かなりレバレッジ(借金)を掛けて商売を広げ成功してきた企業です。

そのため有利子負債(利息を払わないと行けない負債)がかなり多くあります。

グループごとの有利子負債とリース債務残高も確認しておきましょう。

2019年3月31日2020年9月30日増減
ソフトバンクグループ6,714,950百万円7,583,718百万円868,228百万円
ソフトバンク3,186,618百万円3,965,178百万円778,560百万円
ヤフー130,099百万円393,768百万円263,669百万円
スプリント4,428,378百万円4,836,294百万円407,916百万円
ソフトバンクビジョンファンド36,571百万円624,350百万円587,779百万円
その他1,1188,490百万円685,836百万円△502,654百万円
合計15,685,106百万円18,088,604百万円2,403,498百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

半年でグループ全体で2,403,498百万円増えています。

有利子負債が増えれば当然それだけ利息が増加します。

利息が増えれば利益を圧迫していきますのでちょっと気になるところですね。

ソフトバンクグループの2020年3月期第2四半期のキャッシュフロー

次はキャッシュフローはどうでしょう?

倒産するかどうかで一番大事なのはこちらです。

極論から言えば万年大赤字でもお金さえ回れば倒産しません

このあたりは私が元々ボロ株の中の人だったこともありますのでよく分かります(笑)

なお、キャッシュフローの見方についてはこちらの記事も合わせて御覧ください。

2020年3月期第2四半期:営業活動によるキャッシュフロー

まずは本業でうまくお金が回っているのかを示す営業活動によるキャッシュフローです。

2020年3月期第2四半期373,659百万円
2019年3月期第2四半期782,775百万円
増減△409,116百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

営業活動によるキャッシュフローは前期同月と比較して大きく減らしています。

この主な原因は前期にSBGJ において発生したソフトバンク㈱ 株式売却益などに対する法人税 321,290 百万円を納付したことによるものです。

一時的なものですからそれほど気にする必要はないでしょう。

営業活動によるキャッシュフローでソフトバンクの本業ではお金は問題なく回っているってことがわかります。

2020年3月期第2四半期:投資活動によるキャッシュフロー

次は投資活動によるキャッシュフローです。

2020年3月期第2四半期△2,125,621百万円
2019年3月期第2四半期△1,118,068百万円
増減△1,007,553百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

投資活動によるキャッシュフローでは前年より大きくマイナス幅を広げています。

主な理由としてはWeWork への投資、スプリントがリース携帯端末および 5G 向け通 信設備を取得したこと、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資を行ったことなどが挙げられます。

投資活動のキャッシュフローは将来への布石ですからマイナスは悪いことではないんですよ。

むしろ、ここがプラスの企業よりもマイナスの企業のほうが将来への投資をしているということですから今後に期待が持てるのです。

2020年3月期第2四半期:財務活動によるキャッシュフロー

最後は財務活動によるキャッシュフローです。

2020年3月期第2四半期2,191,030百万円
2019年3月期第2四半期62,945百万円
増減2,128,085百万円

出所:ソフトバンクグループ株式会社「2020年3月期第2四半期決算短信」より

財務活動によるキャッシュフローは前年同月比比較でかなり増えています。

主な要因としては借入金を増やしたこと、社債を発行したことによるものです。

フリーキャッシュフローがマイナスなのが気になる

今まで見てきたようにソフトバンクの現在のキャッシュフローは本業で利益を出しつつ、財務活動でお金を集め、それを投資に回しているという状況です。

本業でお金が回っていますし、大きな投資活動もしているのにお金が回っているわけですから今の所、倒産してしまうような大きな問題は想定しずらいです。

ただし、一般的に見ると投資に回す金額が身の丈に合っていないのが気になります。

営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを引いたものをフリーキャッシュフローといいますが、ソフトバンクグループはこれがマイナスとなっています。

つまり、本業で稼いだお金で投資をしているわけではないのです。

それだけでは足りずお金をどこかから調達して投資をしているのです。

ソフトバンクグループはずっとその傾向にあるのです。

当然、背伸びしてビジネスを回しているわけですからうまく行っているときには大きな成長となります。

しかし、今回のWeWorkのようなことがあると大きなダメージを受けてしまいやすいのです。

現状はお金の調達が出来ていますので問題ありませんが、その供給が止まった時に大きな問題となってしまう可能性があります。

ソフトバンクグループの2020年3月期第2四半期決算まとめ

今回は「ソフトバンクグループは潰れるのか?2020年3月期第2四半期で真っ赤っかの大赤字計上」と題してソフトバンクグループの2020年3月期第2四半期決算をみてきました。

かなり大きな赤字となっていますが、財務面やキャッシュフローの状況を見るとすぐに倒産するとかそんな話ではぜんぜんありません

ただし、今までもずっとそうですが、ソフトバンクグループはかなり身の丈を大きく超えた投資を繰り返す企業です。

それが成長の原動力になってきたのですが、今回のWeWorkのような大コケを繰り返すと本当に倒産という話もでてこないわけでもありません。

ソフトバンクグループに投資をする場合にはその辺りも加味しつつ決算内容などを定点観測する必要があるでしょうね。

なお、決算書や四季報はどのように読めばよいのかわからない方はこちらの記事をどうぞ。

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