厚生労働省から「国民年金の加入・納付状況」が発表されました。
その中で注目なのが国民年金の納付を全額免除されていたり、猶予されている人が過去最高の609万人に達したことでしょう。
新型コロナの影響もあったのでしょう、前年比較しても26万人も増加しています。
国民年金の第1号被保険者の納付者が被保険者の半分程度しかいないというかなり厳しい現実も・・・
今回は「国民年金の加入・納付状況」を元に国民年金の納付状況についてあらためて確認してみましょう。
国民年金被保険者の全体の動向
まずは国民年金など公的年金の全体の加入者数の推移を見てみましょう。
出典:厚生労働省 国民年金の加入・納付状況
少子高齢化の影響が大きいのか全体の加入者数も前年6,762万人なのに対して6,740人と22万人ほど減少しています。
なお、第1号被保険者の方は自営業者、厚生年金対象外のパート・アルバイト、厚生年金対象外の会社に勤務している方、無職の方などです。
第2号被保険者は厚生年金加入者で会社員の方、厚生年金加入条件を満たしたパート・アルバイトの方などです。
第3号被保険者は第2号被保険者の妻(専業主婦)です。
それぞれの内訳を見ると大きく変動があります、
厚生年金加入者は増加(第2号被保険者)
まずサラリーマンなど厚生年金加入者が令和元年が4,488万人なのに対して、令和2年では4,498万人と10万人ほど増加しています。
第2号被保険者は年々増加していますね。
これはパートやアルバイトの方も厚生年金や健康保険に厚生年金を適用するようにルール改正されたことが大きいです。
つまり、加入しなければ行けない人が増えたってことですね。
国民年金加入者は減少(第1号被保険者)
国民年金の加入者の第1号被保険者は減少傾向が続いています。
令和元年が1,453万人なのに対して、令和2年では1,449万人と4万人ほど減少しています。
これは前述のパート・アルバイトの厚生年金加入の影響が大きいと思われます。
専業主婦は減少傾向(第3号被保険者)
第2号被保険者は増えていますが、逆に第3号被保険者はずっと減少傾向です。
令和元年が820万人なのに対して、令和2年では793万人と27万人ほど減少しています。
これは経済状況もありますし、女性の社会進出が一般的になってきたこともあり、そもそも専業主婦を選択する人が減ってきたということでしょう。
まとめると・・・
つまり、まとめると全体の加入者は減り、内訳では厚生年金保険の対象者(サラリーマンなど)が増えて国民年金の第一号被保険者(自営業や無職)や国民年金の第三号被保険者(専業主婦など)が減っているということになります。
ある意味今の現在の状況を表しているのかもしれませんね。
国民年金の全額免除者が増加中
今回発表された統計情報で特に注目なのが国民年金の第1号被保険者の内訳です。
データを抜粋すると以下の通りとなります。
- 国民年金の第1号被保険者数:1,449万人
- 任意加入被保険者:19万人
- 全額免除・猶予者:609万人 うち、法定免除者139万人、申請免除者235万人、学生納付特例177万人、納付猶予58万人
- 産前産後免除者:1万人
- 納付者数:726万人 うち、一部免除者36万人(3/4免除19万人、半額免除11万人、1/4免除6万人)
- 未納者:115万人
全額免除・猶予者が過去最高
まず注目は全額免除・猶予者です。
令和元年が583万人なのに対して、令和2年では609万人と26万人ほど増加しています。
全額免除・猶予者は平成28年が583万人、平成29年が574万人、平成30年が574万人、令和元年が583万人と波こそあるものほぼ横ばいで推移していました。
しかし、令和2年で急増した形ですね。
全体の42.6%が全額免除・猶予者なんですよ・・・
こちらも過去最高の値となっています。
これは新型コロナの関係の特例免除制度の存在が大きいのでしょう。
未納者は減少傾向
納付する必要があるのに納めてない未納者は減少傾向にあります。(24ヶ月未納でカウント)
平成28年が179万人、平成29年が157万人、平成30年が138万人、令和元年が125万人、令和2年が115万人と毎年減り続けているんですよ。
最終納付率も年々増加して77.2%となっています。(最終納付率は国民年金の納付対象月数に対する納付月数の割合)
出典:厚生労働省 国民年金の加入・納付状況
これは取り立てにかなり力を入れていることが大きいのでしょう。
納付者の割合が低下
全体の第1号被保険者数が1,449万人なのにたいして納付者数は726万人(一部免除者含む)
つまり、被保険者の半分の程度しか納めていないという。
前年と比較しても20万人減っています。
かなり歪な状況ですね。
民間の年金制度なら運営は難しい状況になっているでしょうね・・・
年金制度は破綻しないが・・・
なお、年金が将来破綻するのではないか?と考える方も多いようですが、そもそも日本の公的年金は賦課方式を採用しています。
賦課方式とは今、現役世代の年金保険料として払った金額がそのまま年金として現在、高齢者の方に支給される仕組みです。
つまり、自分が将来もらう年金も、自分が納めたお金ではなく、自分たちの子どもや孫世代が納めた保険料から支払われるのです。
そもそも保険料の範囲で給付を行うという仕組みの賦課方式ですから破綻しようがないのです。
また、年金の運用も損失が出たときだけ報道され溶かしていると勘違いされがちですが、実はかなりうまく言っているんですよ。
ただし、自分が納めた分が戻ってくるのかという点はその時の状況、自分が何歳まで生きるかによって変わってくるのでなんとも言えませんが・・・
問題はそもそもの少子高齢化ではじめの設計段階から無理が生じてきてしまった構造的な部分でしょうね。
納付者が半分しかいないという歪な構造になってしまっていますし、年金制度はそろそろ抜本的な見直しが必要な時期に来ているのは確かでしょう。
全額免除、一部免除の方も余裕があれば追納しよう
多くの方が全額免除や一部免除しています。
しかし、免除対象となればそれだけ将来のもらえる年金も減るってことになることは知っておきたいところです。
全額免除、一部免除者がもらえる年金
それではどれだけもらえるのでしょう?
免除した期間については以下の取扱で計算されます。
- 全額免除:平成21年4月分からの保険料の全額が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1が支給されます。
- 学生納付特例、納付猶予:年金額には反映されない。
- 産前産後免除者:全額納付扱いとなり年金への影響なし
- 4分の3免除:平成21年4月分からの保険料の4分の3が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の5/8(平成21年3月分までは1/2)が支給されます。
- 半額免除:平成21年4月分からの保険料の2分の1が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の6/8が支給されます。
- 4分の1免除:平成21年4月分からの保険料の4分の1が免除された期間については、保険料を全額納付した場合の年金額の7/8が支給されます。
払わなくても半分反映されたり、お得ではありますがもらえる年金が減ることには代わりありません。
ただし、学生納付特例や納付猶予の場合は年金額には反映されませんのでご注意ください。
お金に余裕ができたら追納しよう
前述のように全額免除や一部免除を受けていると保険料を全額納付した人に比べて将来もらえる年金が少なくなります。
特に納付猶予、学生納付猶予はその期間まったく年金に反映されません・・・
そこで後からお金に余裕ができたときに納付できる制度があります。
追納です。
追納すれば通常に納めた場合と同じ扱いとなります。
また、追納で支払った国民年金はその年の社会保険料控除が受けられます。
それにより所得税・住民税が軽減されますので余裕がある際の節税策としても効果的ですね。
ただし、追納できるのは追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られています。
あまり古い期間の国民年金を追納することはできませんのでお早めに動きましょう。
まとめ
今回は「国民年金の全額免除・猶予者が過去最高の609万人。納付者は半数程度しかおらず年金制度は抜本見直しの時期かも」と題して国民年金の納付状況についてみてきました。
かなり多くの方が全額免除や猶予を受けていることがわかりました。
免除や猶予を受けているとどうしても将来もらえる年金が減ってしまいます。
老後のことを考えると前述した追納制度や自分で老後資金を積み立て運用する個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)などを利用して準備もしておきたいところですね。
なお、イデコと国民年金免除の関係は下記記事をご覧ください。
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