本記事は、源泉徴収票がもらえない、届かない、紛失した、会社が発行してくれないといった深刻な悩みを解決する完全ガイドです。
「退職した会社に連絡しづらい」「催促しても無視される」という方も、税務署という強力な味方を活用すれば、確実に源泉徴収票を入手できます。
法的根拠から具体的な対処法まで、すべてお伝えします。
なぜ源泉徴収票が届かないと「詰む」のか
「源泉徴収票なんて、もらったことがあるような、ないような…」
そんな方も多いかもしれません。
実際、源泉徴収票は年末の給与明細と一緒に配布されることが多く、気づかないうちに紛失してしまうケースが後を絶ちません。
しかし、この「たった1枚の紙」がないと、人生の重要な場面で身動きが取れなくなることがあるのです。
源泉徴収票が必要になる5つの場面
源泉徴収票は、あなたの「収入の証明書」として、以下のような場面で必要になります。
確定申告をするとき
ふるさと納税でワンストップ特例制度を使えなかった方、医療費が年間10万円を超えた方、住宅ローン控除を受ける初年度の方などは、確定申告が必要です。
源泉徴収票がないと、そもそも申告書を作成できません。
なお、2019年4月以降は紙ベースでの確定申告でも源泉徴収票の添付自体は不要になりました。
ただし、確定申告書には源泉徴収票の内容を記載する必要があります。
つまり「紙を添付しないで済む」だけで、「金額が分からなくていい」ではありません。
転職するとき
年の途中で転職した場合、転職先の会社で年末調整を受けるには、前職の源泉徴収票が必須です。
提出できなければ、転職先で年末調整ができず、自分で確定申告をしなければなりません。
住宅ローンを組むとき
マイホーム購入の際、金融機関は必ず年収の証明を求めます。
会社によってはマイカーローンでも求められるケースもあります。
源泉徴収票は収入を客観的に証明する最も確実な書類であり、これがないとローン審査が進みません。
場合によっては過去3年分を求められることもあります。
賃貸物件を借りるとき
家賃を支払える収入があるかを大家さんが確認するため、入居審査で源泉徴収票の提出を求められることがあります。
補助金・手当を申請するとき
所得制限のある補助金や各種手当の申請には、所得を証明する書類が必要です。
最近はマイナンバーで確認できるケースも増えていますが、源泉徴収票の提出を求められる場合も依然として多いです。
知らないと損する「会社の法的義務」
ここで最も重要なことをお伝えします。
源泉徴収票の発行は、会社の「法的義務」です。
これは単なるマナーや慣習ではありません。
所得税法第226条において、給与の支払者(会社)は、源泉徴収票を従業員に交付しなければならないと明確に定められています。
法律で定められた交付期限
会社は以下の期限までに源泉徴収票を交付する義務があります。
| 状況 | 交付期限 |
|---|---|
| 通常の場合(在職者) | 翌年1月31日まで |
| 年の途中で退職した場合 | 退職日から1ヶ月以内 |
つまり、6月に退職したなら7月末までには、源泉徴収票が届いていなければおかしいのです。
違反した場合の罰則
「義務とは言っても、守らなくても罰則がないんじゃないの?」
そう思われた方もいるかもしれません。しかし、所得税法第242条には明確な罰則規定があります。
これは虚偽の内容を記載した場合も同様です。
つまり、源泉徴収票を出さないことは、法律違反であり、刑事罰の対象となりうる行為なのです。
この事実を知っているだけで、会社との交渉において大きなアドバンテージになります。
再発行も無料
源泉徴収票の再発行に手数料はかかりません。
また、会社には発行義務があるため、再発行を拒否することはできません。
税務署・市役所ではなく会社に依頼
なお、源泉徴収票は会社が発行する書類であるため、税務署や市役所に行っても発行してもらえません(会社から税務署に提出はされていますが、本人への交付は行っていません)。
必ず発行元である会社に依頼してください。
源泉徴収票がもらえない「本当の理由」
では、なぜ法的義務があるにもかかわらず、源泉徴収票がもらえないケースがあるのでしょうか。
理由1:単純な事務処理の遅れ・ミス
最も多いのがこのパターンです。
経理担当者の退職、人員不足、システムの問題などで、発行が遅れているケースです。
この場合は催促すれば解決することがほとんどです。
なお、12月・1月は経理や税理士事務所の繁忙期です。
「いつ発送予定か」だけ確認し、前述の交付期限や罰則など余計な言葉を足さないのが得策です。
理由2:法律知識の欠如
残念ながら、源泉徴収票の交付が法的義務であることを知らない経営者や担当者もいます。
特に小規模な会社では「もう渡したはず」「再発行は面倒」といった理由で対応されないこともあります。
ちなみに事業者が個人事業主などに対して払った報酬の内容を、国に報告する「支払調書」は税務署などへの提出は義務ですが、支払先本人への交付義務はありません。
それと勘違いしている担当者もいたりします。
理由3:意図的な嫌がらせ
円満退社でなかった場合や、何らかのトラブルがあった場合、中小企業の経営者や人事担当者の中には、退職者に対して感情的なしこりを持つケースが少なくありません。
「うちを裏切って辞めた人間に、なぜ親切に書類を送らなければならないのか」 「忙しいのに、辞めた人間のための手続きなんて後回しだ」
これは完全な違法行為ですが、残念ながら一定数存在します。
これは経営者の個人的な感情論に過ぎず、法律上は通用しません。
理由4:資金繰りと横領の疑い
単なる嫌がらせではなく、会社が「源泉徴収票を出したくても出せない」状況もあります。
経営状態が悪い会社や、いわゆるブラック企業では、給与から天引きした税金を適正に納付していないような場合です。
源泉徴収票とは、本来「従業員の給与から天引き(預かった)所得税を、会社が代わりに国に納めました」という証明書です。
しかし、資金繰りが火の車の会社では、従業員から預かったはずの源泉所得税を、運転資金になど流用してしまっていることがあるのです。
または経理担当者の横領というケースもあります。
そのような場合、源泉徴収票を出すことで問題が発覚することを恐れ、発行を避けようとすることがあります。
このケースでは、電話で何度催促しても「担当者が不在」「今やっている」とのらりくらりとかわされるだけです。
彼らは事務が忙しいのではなく、税務署が怖いのです。
理由5:雇用ではなく、業務委託等だった
以下のような場合は、そもそも源泉徴収票が発行されません。
これは違法ではなく、仕組み上の問題です。
- 業務委託契約で働いている場合(給与所得ではないため)
- 個人事業主として報酬を受け取っている場合
- 日雇いで日給9,300円未満の場合
本人は社員だとおもっていたが、実が業務委託だったというケースもありますので要注意です。
理由6:住所変更や郵便事故
退職後に引っ越した、転送期間が切れた、会社の登録住所が古い。
そのため届かないというのは意外とよくあります。
また、郵便局側も12月、1月は繁忙期で学生アルバイトを大量に雇っていることもあり、郵便事故も多くなる傾向があります。
おそらく普通郵便で送っているでしょうから、他の家のポストに投函されてしまっていれば会社側も気づきません。
もしその可能性があるなら会社へ連絡して「送付先住所の確認」と「再送」を依頼しましょう。
【ステップ別】源泉徴収票を確実に入手する方法
それでは、具体的にどうすれば源泉徴収票を手に入れられるのでしょうか。段階を追って説明します。
ステップ1:まず会社に連絡する
当たり前のことですが、まずは会社(前職の場合は前職の会社)に連絡することから始めましょう。
連絡先は、在職中にお世話になった人事部や経理部の担当者が理想的です。
わからなければ、会社の代表電話に連絡し「源泉徴収票の発行について担当部署にお繋ぎください」と伝えれば対応してもらえます。
派遣社員の方は、働いている派遣先ではなく、派遣元の派遣会社に依頼してください。
ポイント:証拠を残す
電話だけでなく、メールや書面でも依頼しておくことをおすすめします。
後述する「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する際に、「会社に交付を求めた」という証拠として使えるからです。
伝えるべきポイントは3つだけです。
- 必要な年分
- 送付先
- いつまでに欲しいか(法定期限に合わせる)
期限を切ること(重要)、「困っている」という実情を伝えること、感情的にならず、事務的に徹することを意識するとよいでしょう。
紙の交付の代わりに、本人の同意があれば電子的な方法で情報提供する形も可能です(本人が紙を求めた場合は紙で交付する必要)
「PDFでも可」と書くだけで処理が早まることが多いです。
ステップ2:法的義務を伝える
催促しても対応してもらえない場合は、源泉徴収票の発行が法的義務であることを明確に伝えましょう。
「所得税法第226条に基づき、源泉徴収票の交付は会社の義務です。交付しない場合は同法第242条により罰則の対象となります」
このように伝えるだけで、態度が変わることも多いです。
ただし、「出さないなら通報します」と言うと、相手は防御姿勢になります。
結果として遅れることも多いので、法的義務の話のあとに言うべきは「いつ出ますか?」です。
ステップ3:税務署に届出書を提出する(最強の切り札)
それでも対応してもらえない場合は、いよいよ「切り札」を使います。
「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出する
これが、源泉徴収票を確実に入手するための最終手段であり、最も効果的な方法です。
「源泉徴収票不交付の届出書」完全解説
最後の切り札「源泉徴収票不交付の届出書」についてもう少し詳しく解説しておきましょう。
この届出書の威力
「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出すると、税務署から会社に対して「速やかに源泉徴収票を発行するように」という行政指導が入ります。
私自身、転職後に前職の会社に源泉徴収票の発行を要求したところ「すでに渡した」と拒否されたことがあります。
実際には事務ミスだと思いますが、もらっていませんでした。
そこでこの届出書を税務署に提出したところ、すんなりと発行してもらえました。
税務署からの連絡というのは、会社にとってかなりのプレッシャーになるようです。
届出書を提出できる条件
この届出書は、いつでも誰でも出せるわけではありません。
以下の条件を確認してください。
1. 交付期限を過ぎていること
- 退職の場合:退職日から1ヶ月以上経過
- 在職の場合:翌年1月31日以降
2. 給与所得の源泉徴収票であること
報酬に対する「支払調書」は対象外です。
業務委託契約などで受け取る報酬は、そもそも源泉徴収票の対象ではありません。
3. 会社に交付を求めていること
いきなり届出書を出すのではなく、まず会社に発行を求めたことが必要です。
届出書の入手方法
国税庁のホームページからPDFをダウンロードできます。
国税庁「源泉徴収票不交付の届出手続」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100017.htm
届出書の記載内容
届出書には以下の内容を記載します。
- 届出者(あなた)の情報:住所、氏名、個人番号(マイナンバー)
- 会社の情報:所在地、名称、電話番号、従業員数
- 収入金額・源泉徴収税額:1年間の合計金額
- 給与明細書の保存の有無:「有」の場合は写しを添付
- これまでの経緯:会社に交付を求めた日、方法、担当者名など
- 在職期間
分からない部分がある場合は税務署に相談してみてください。
提出方法
- 提出先:管轄する税務署
- 提出方法:持参、郵送、またはe-Taxでの電子申請
- 添付書類:給与明細書の写し等(保存している場合)
提出先は労働基準監督署ではありませんのでお気をつけください。
管轄の税務署です。
源泉徴収票は「税金」に関する書類なので、管轄は国税庁(税務署)なんですよ。
提出後の流れ
届出書を受理した税務署は、会社に対して源泉徴収票を交付するよう行政指導を行います。
ただし、重要な注意点があります。
あくまで「本来すべき手続きをきちんと行うように」という指導であり、強制力はないのです。
しかし実際には、税務署からの指導を無視する会社はほとんどありません。
届出書の提出後、多くのケースで源泉徴収票が発行されています。
会社に氏名が伝わるのが不安な場合
なお、届出書には「税務当局が事業主に氏名を告知して差し支えないか」という選択欄があります。
不安が強い場合は、提出前に税務署へ確認しながら進めるのが安全です。
ケース別・こんな時どうする? Q&A
ここでは、よくある複雑なケースについてみていきましょう。
Q1.会社が倒産して連絡がつきません
「前職の会社が倒産してしまった…」
このような場合も、対処法はあります。
破産管財人に連絡する
倒産した会社の事後処理を行っている破産管財人がいれば、そちらに連絡してみましょう。
破産処理の過程で源泉徴収票が発行されることもあります。
税務署に相談する
会社が存在しない場合でも、まずは「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出し、状況を説明しましょう。
税務署側で対応方法をアドバイスしてもらえます。
特殊なケースとして、震災などでデータが消失した場合には、税務署が特例的に対応してくれることもあるようです。
Q2. 「手渡しで渡すから取りに来い」と言われました。行くべきですか?
行く必要はありません。郵送もしくはデータを求めてください。
これは典型的な「嫌がらせ」の一種です。
退職後の職場に行くのは心理的負担が大きく、そこで説教や嫌味を言われるなどトラブルのリスクもあります。
「転居しており伺えません」「多忙につき郵送をお願いします」と突っぱねて構いません。
法律上、交付方法は手渡しに限定されていません。
PDFでもよければメールでももらえます。
どうしても拒否されるなら、郵送用の封筒(切手貼付済み)を送るのも一つの手ですが、それでもダメなら「源泉徴収票不交付の届出書」へ移行しましょう。
Q3. 「うちは源泉徴収していないから票もない」と言われました。
まずは給料明細を確認してください。
給与明細の「所得税」欄が0円であれば、確かに源泉徴収されていません(月額88,000円未満の場合など)。
もし、給与から引かれているのに「していない」と言っているなら、それは会社が納税していなかったり、業務上横領(預り金の着服)の可能性があります。
給与明細を持って税務署へ相談に行きましょう。
2024年からの新サービス:マイナポータル連携
ここで朗報です。
2024年(令和6年)の確定申告から、大きな変化がありました。
マイナポータル連携で、源泉徴収票の情報が自動入力できるようになりました。
これは、マイナンバーカードを利用してe-Taxで確定申告をする際に、会社から税務署にe-Taxで提出された源泉徴収票の情報が、確定申告書に自動で反映される仕組みです。
利用の条件
この機能を使うには、以下の条件を満たす必要があります。
- マイナンバーカードを持っていること
- 勤務先がe-Taxまたは認定クラウドで源泉徴収票を税務署に提出していること
- 事前にマイナポータルとe-Taxの連携設定を行っていること
メリット
源泉徴収票を紛失してしまっても、会社が適切に税務署へ提出していれば、確定申告に必要な情報を自動で取得できます。
入力ミスも防げるため、正確な申告書を作成できます。
ただし、これはあくまで「確定申告書の作成」を便利にする機能です。
転職先への提出や住宅ローン審査など、書面としての源泉徴収票が必要な場面では、やはり会社から発行してもらう必要があります。
源泉徴収票問題を考える
ここからは、元経理かつ、中小企業診断士で多くの企業を見てきた立場から、この問題の本質をお伝えします。
源泉徴収票を出さない会社は「要注意」
源泉徴収票の発行は、会社にとってそれほど難しい作業ではありません。
給与計算システムを使っていれば、ボタン一つで出力できるレベルです。
それにもかかわらず発行しない(できない)会社には、以下のような問題が潜んでいる可能性があります。
- 経理体制が脆弱:人員不足やシステム未整備で、基本的な事務処理ができていない
- コンプライアンス意識の欠如:法令遵守の意識が低く、労働者の権利を軽視している
- 税務上の問題:源泉徴収した税金を適正に納付していない可能性がある
在職中の方であれば、このような会社に長くいることのリスクを認識しておく必要があるかもしれません。
「泣き寝入り」は会社のためにもならない
源泉徴収票を出してもらえないからといって、諦めてしまう方もいます。
しかし、これは自分のためにも、会社のためにもなりません。
あなたが声を上げることで、会社が法的義務を認識し、今後同じ問題が起きないようになる可能性があります。
一人の行動が、組織を変えるきっかけになることもあるのです。
証拠を残すことの重要性
会社への依頼は、必ず証拠が残る形で行ってください。
メール、書面、内容証明郵便などが有効です。
これは「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する際に必要になるだけでなく、万が一、会社との間で他のトラブルが発生した際にも、会社の対応姿勢を示す証拠として使える可能性があります。
まとめ
源泉徴収票がもらえないという問題は、決して珍しいことではありません。
しかし、適切な知識と行動があれば、必ず解決できます。
「会社に連絡しづらい」「催促するのは気が引ける」という気持ちはよくわかります。
しかし、源泉徴収票の発行は法的義務であり、あなたには受け取る権利があります。
この記事が、源泉徴収票の問題で悩む方の一助となれば幸いです。

