あなたのポケットの中にあるiPhone。それは実は、「日本円の実力」を映す鏡です。
2025年9月に発売されたiPhone17の日本価格は129,800円(税込)。
だいぶ高くなったな・・・って感じる方も多いかもしれません。
しかし、実はドルベースだと価格がずっと据え置きなんですよ。
さらにこの価格を「働いた時間」に換算すると、日米の間に驚くほどの格差が広がっていることが見えてきます。
しかも、高市政権の積極財政路線のもと、足元では1ドル=150円台後半まで円安が進行しています(2026年2月時点)。
円安がさらに進めば、次のiPhoneはもっと高くなるかもしれません。
この記事では、iPhoneの歴代価格と為替の関係を紐解きながら、「円安が私たちの生活にどれだけのコストを強いているのか」を具体的な数字で可視化していきます。
iPhoneの過去価格が教えてくれること―「値上げ」の正体は為替だった
まず、歴代iPhoneのベースモデル(最小容量)の日本発売時価格を振り返ってみましょう。
| 機種名 | 発売年 | 日本価格(税込参考) | 米国価格(ドル) | 発売時の為替レート(目安) |
|---|---|---|---|---|
| iPhone 6 | 2014年 | 約75,800円 | 199ドル(契約込) | 約109円 |
| iPhone 7 | 2016年 | 約78,600円 | 649ドル | 約102円 |
| iPhone X | 2017年 | 約121,800円 | 999ドル | 約112円 |
| iPhone 11 | 2019年 | 約82,300円 | 699ドル | 約108円 |
| iPhone 12 | 2020年 | 約94,400円 | 799ドル | 約105円 |
| iPhone 13 | 2021年 | 約98,800円 | 799ドル | 約110円 |
| iPhone 14 | 2022年 | 約119,800円 | 799ドル | 約144円 |
| iPhone 15 | 2023年 | 約124,800円 | 799ドル | 約148円 |
| iPhone 16 | 2024年 | 約124,800円 | 799ドル | 約143円 |
| iPhone 17 | 2025年 | 約129,800円 | 799ドル | 約147円 |
注目すべきは、米国での価格です。
iPhone 12からiPhone 17まで、ベースモデルの価格は4年連続で799ドル据え置きでした。
ProでもiPhone 17Proで多少値上げしていますが、16Proまでは999ドルと長年据え置きとなっています。
一方、日本では同じ期間にiPhone 12の約94,400円からiPhone 17の129,800円へと、約37%も上昇しています。
つまり、iPhoneの「値上げ」の大部分は、製品そのものの価格上昇ではなく、円安による為替影響だということです。
米国のApple本社が設定するドル建て価格はほとんど変わっていないのに、日本人が支払う円建て価格だけが膨らみ続けている。
これがiPhoneの過去価格が教えてくれる、残酷な事実です。
iPhone17を買うための労働時間――日米格差はここまで開いた
では、iPhone17(256GB・税抜117,818円)を買うために、日米それぞれどれくらい働く必要があるのでしょうか。
日本の場合:55時間
日本人の平均年収は約460万円(令和5年・国税庁「民間給与実態統計調査」)。平均労働時間を年間1,950時間とすると、平均時給は約2,359円です。
iPhone 17(税抜約117,818円)を買うのに必要な労働時間は、約49.9時間。
つまり、1週間以上まるまる働いてようやく手に入る計算です。
消費税込みの129,800円で計算すると約55時間です。
最低賃金で見るとさらに厳しくなります。
2025年10月改定の東京都最低賃金は1,226円(出典:厚生労働省)。
税抜価格でも約96.1時間、税込みだと約105.9時間。2週間以上の労働が必要です。
最も最低賃金が低い地域(沖縄・高知・宮崎:1,023円)では、税抜でも約115.2時間。
約3週間分の賃金が丸ごとiPhone1台に消える計算になります。
米国の場合:23.7時間
米国労働省統計局(BLS)の2024年調査によると、米国の民間非農業部門の平均時給は約35ドルです。
iPhone 17は米国で829ドル(税抜)ですから、わずか約23.7時間。
日本の平均的な労働者の約半分の時間で買えてしまいます。
ニューヨーク州の最低賃金は16ドル(2025年時点)ですが、それでも約51.8時間。
日本の「平均的な所得の方」とほぼ同じ水準です。
まとめると、こうなります。
| 比較項目 | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 平均所得者の必要労働時間 | 約50時間 | 約24時間 |
| 最低賃金(最高地域)での必要時間 | 約96時間(東京) | 約52時間(NY) |
| 最低賃金(最低地域)での必要時間 | 約115時間(沖縄等) | ー |
同じスマートフォンを買うのに、日本人はアメリカ人の約2倍働かなければならない。
この差は、円安と賃金格差の「二重苦」が生み出しているのです。
なぜ円安は止まらないのか―高市氏の政策「積極財政の代償」
「円安はいつか収まるだろう」。そう考えている方も少なくないかもしれません。
しかし、現在の円安には構造的な背景があり、簡単には解消しない可能性が高いのです。
「高市トレード」が円安を加速させた
2025年10月に高市早苗氏が総理大臣に就任して以降、「高市トレード」と呼ばれる円安・株高の動きが顕著になりました。
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、事業規模42.8兆円の総合経済対策を打ち出しました。
2025年度補正予算では約11.7兆円を新規国債の発行で賄っています。
大和総研のレポートによれば、実質政府債務残高が1%増加すると、輸入の増加を通じて実質実効為替レートが1年後に約0.9%円安になるとの分析結果が出ています。
さらに、2026年2月1日には高市首相が街頭演説で「円安は輸出産業には大チャンス。
「外為特会の運用がホクホク」と発言し、円安容認とも受け取れるメッセージを市場に送りました。
翌日にXで釈明したものの、市場は敏感に反応し、156円台まで円安が進行しています。

「財政拡張→円安→物価高→さらに財政拡張」という悪循環
三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏は、高市政権下で「財政拡張→利上げ先送り→円安加速→輸入物価上昇→さらなる物価高→さらなる財政拡張」という循環が生じる可能性を指摘しています
野村證券の見通しでは、2025年末のドル円を150円、2026年末を140円と予想していますが、高市政権の財政スタンスが変わらなければ「160円方向のリスクもある」との声も出ています(出典:野村證券、2025年10月)。
つまり、現在の円安は一時的な現象ではなく、政策的に「構造化」されつつあるリスクがあるのです。
「国が借金をしてお金を配る」ということは、市場に出回る円の量が増えることを意味します。モノの量が変わらずに通貨の量だけが増えれば、通貨1単位あたりの価値は希薄化します。これを私たちは「インフレ」や「円安」と呼びます。
「円安のメリット」は本当か?――見落とされている3つのコスト
ここで、円安を歓迎する声に対して、冷静に考えてみたいことがあります。
輸入品の「見えない値上げ」
iPhoneは象徴的な例に過ぎません。
食料品、エネルギー、原材料――日本が海外から輸入するすべてのモノが、円安によって実質的に値上がりしています。
食料自給率38%(カロリーベース、農林水産省2024年度概算)、エネルギー自給率わずか13.3%(資源エネルギー庁、2022年度)の日本にとって、円安は生活コスト全体を押し上げる「見えない増税」と同じ効果を持ちます。
賃金上昇が円安に追いつかない
日本の賃金は確かに上昇傾向にあります。
2025年の最低賃金は全国平均1,121円と、前年から66円(6.2%)上がりました。
しかし、2021年から2025年にかけてのドル円レートは約110円から155円前後へと、約40%も円安が進んでいます。
賃金の上昇率6%では、為替の変動40%にはとても追いつきません。
これは、名目賃金が上がっても「実質的な購買力」は下がっていることを意味します。
「輸出で儲かる」は大企業の話
「円安になれば輸出企業が儲かり、日本全体が潤う」 これは昭和の成功体験であり、今は通用しない「古い常識」です。
恩恵を受けるのは主にトヨタやソニーなどの大手輸出企業だけなのです。
日本の企業の99.7%を占める中小企業にとっては、原材料費の高騰というマイナス面の方がはるかに大きいのが実態です。
しかも、大企業が海外で得た利益は必ずしも国内の賃金や雇用に還元されるとは限りません。
また、現在の日本経済は、製造拠点の多くを海外に移転しています。
円安になっても、かつてほど輸出量は増えないのです。
その一方で、私たちはGoogle、Amazon、Meta、Apple、Netflixといった米国の巨大テック企業に、毎月莫大な「デジタル利用料」を支払っています。これを「デジタル赤字」と呼びます。
iPhone 17の端末代金だけでなく、iCloudのストレージ代、アプリの課金、YouTube Premiumの会費。
これらはすべて、最終的にはドルで支払われます。
この構造がある限り、構造的に円は売られ続けます。
積極財政で円を市場に溢れさせれば、この流れは加速こそすれ、止まることはありません。
iPhone30万円時代は到来する?
ここで一つ、未来のシミュレーションをしてみましょう。
2025年9月のiPhone 17発売時の為替レートは約147円でした。
仮に高市政権の積極財政路線が続き、1ドル=170円まで円安が進んだ場合、次のiPhone 18(仮に米国価格を899ドルと想定)の日本価格はどうなるでしょうか。
899ドル × 170円 = 152,830円(税抜) 税込みでは約168,113円。
ProMaxの上位モデルなら、ついに30万円を超える可能性も現実味を帯びてきます。
MM総研の調査によれば、現時点でも日本は「iPhoneシェアが高い割に、所得に対する購入負担が大きい」状況にあります。
170円台の円安が現実になれば、iPhone はもはや一部の人だけの贅沢品になりかねません。
2022年7月には、急激な円安を受けてAppleが現行モデルのiPhone 13を最大約25%緊急値上げした前例もあります。
「新型発売を待たずに現行モデルが突然値上がりする」という事態は、円安が進めばいつでも起こり得るのです。
さらにメモリ価格の高騰もあり、現実的な話として値上げはかなり確度が高い話なんですよ。

私たちにできること―円安時代の「資産防衛」3つのアクション
では、この円安トレンドの中で、私たちは具体的に何ができるのでしょうか。
円建て資産だけに依存しない
円安が進むということは、円の価値が下がるということです。
資産のすべてを円預金で持っていると、実質的に目減りし続けます。
NISAやiDeCoを活用して、外貨建て資産(海外株式インデックスファンドなど)にも分散投資することが重要です。
円安局面では海外資産の円建て評価額が上がるため、為替変動に対する自然なヘッジになります。
「実質賃金」の視点で家計を見直す
名目的な給料が上がっていても、物価上昇率がそれを上回っていれば、生活は苦しくなります。
家計を「実質賃金」の視点で見直し、固定費の削減や、ポイント還元・キャッシュレス決済の最大活用など、支出の最適化を図りましょう。
iPhoneなどのApple製品を少しでもお得に購入するなら、Appleギフトカードのキャンペーンを活用したり、キャリアの返却プログラムを利用するのも有効な手段です。

「稼ぐ力」を上げる自己投資
円安は「日本で稼ぎ、日本で消費する」人にとって最も不利に働きます。
逆に、外貨で収入を得る手段を持っていれば、円安はむしろ追い風になります。
副業、スキルアップ、あるいは海外向けのサービス提供など、「稼ぐ力」そのものを高める自己投資が、最終的には最も強力な円安対策になるのです。
まとめ:iPhoneは「円の通信簿」である
iPhoneの価格は、単なるガジェットの値札ではありません。
それは、日本円の購買力、日本人の賃金水準、そして日本の経済政策の「通信簿」です。
iPhone 12(2020年)から iPhone 17(2025年)まで、わずか5年で日本価格は約37%上昇しました。
しかし、米国でのドル建て価格はほぼ変わっていません。
この差は、すべて円安―つまり日本円の価値の低下が生み出したものです。
高市政権は「責任ある積極財政」をうたっています。
しかし、積極財政が円安を加速させ、その円安が国民の購買力を削ぐという構造が続く限り、「稼いだお金で買えるもの」はどんどん少なくなっていきます。
つまり、私たちが直面しているのは、「iPhoneが高くて困る」というレベルの話ではありません。
「日本という国が、世界の中で相対的に貧しくなっている」という現実です。
大切なのは、こうした構造を理解した上で、自分自身の資産と収入を守る行動を取ることです。
為替レートの動向、そして次のiPhoneの価格発表。
それらは、あなたの「円の実力」を測るリトマス試験紙です。
ぜひ注目してみてください。

