年金の受給年齢は何歳がベストなのかを考えてみよう。

年金の話になると必ずあがってくるのが「年金を何歳で受け取るのがベストなのか」という話題です。

これかなり難しい話なのです。最近は年金の受給開始年齢を68歳や70歳まで引き上げするという話、年金の繰下げを75歳までできるようになるという話もでていてさらに混乱してしまいます。

これは結論から言えば人により異なるんですね。

年金制度はかなり複雑で性別、生年月日、加入していた年金制度(厚生年金、国民年金、共済年金等)によりかなり条件が違います。

それにより判断も変わってくるはずなんですよ。

まずは現在の年金制度をしっかり理解して自分が何歳で年金をもらうといくらになるのかを知ることが大事です。

そこで今回は過去の年金関連記事のまとめとして年金受給年齢は何歳がベストなのかを考え方をご紹介しましょう。

※加筆修正を加えました。

まずは公的年金制度について理解しておこう

現在の年金受給年齢は繰上げなどをしなければ65歳からが基本となります。

ただし、後述しますが、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる方は性別、生年月日により60歳〜64歳まで早まるのです。

かなりややこしいところもありますので、まずは現行の公的年金制度の仕組みからおさえましょう。


下記は厚生労働省のiDeCoの説明用の資料ですが日本の年金制度がわかりやすくまとまっていますのでご紹介します。

日本の年金制度は基本的に2階建て、3階建て(4階建てパターンも有り)となっています。


出所:厚生労働省 iDeCo説明ページ

国民年金

1階部分は「国民年金」(基礎年金)で日本に住む方全員を対象とした年金です。

これは自営業でも公務員でも会社員でも無職でも加入することになります。

ちなみに国民年金の加入条件は「日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に加入していない方は、すべて国民年金の第1号または第3号被保険者」となります。(厚生年金保険には国民年金が含まれている)日本国内に住んでいる方が条件ですから日本人とか外国人とかは関係ないんですよ。

海外移住したら国民年金はどうなる?

海外に移住すると国民年金は強制加入ではなくなります。つまり、入らなくても良くなるんですね。

ただし、日本国籍の方であれば、国民年金に任意加入することができます。

ちなみに老後に国民年金を受け取るためには保険料の免除申請期間も含めて10年以上加入していることが条件になっています。

それを超えるならば任意加入も選択肢となるでしょう。

付加年金

国民年金の付随する制度として付加年金があります。付加年金とは簡単にいえば国民年金に少し上乗せして支払うことでもらえる年金も増える制度です。

これはあまり知られていませんが、実はパーセンテージで考えると最もお得な年金制度だったりします

加入できるのは国民年金の第一号被保険者と任意加入被保険者(65歳以上の方を除く)だけですから会社員の方は加入できません。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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厚生年金保険

2階部分は「厚生年金」です。会社員の方が給料から天引きされる年金ですね。

ちなみに公務員の方はもともと「共済年金」という制度がありました。

ちょっと会社員の厚生年金より条件が良かったりもしたんですね。

しかし、2015年10月から被用者の年金が一元化が行なわれ、公務員の共済年金は会社員の厚生年金に統合されました。

厚生年金は2階建て部分ですから天引きされる年金には国民年金分(基礎年金)も含まれています。その分国民年金より高くなりますが、老後にもらえる年金も増える形となります。

また、厚生年金は基本的に会社が半分負担をすることになっています。

そのため厚生年金加入者の負担は実際には半分となっています。

厚生年金の仕組みはこちらの記事を御覧ください。

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厚生年金基金

会社によっては厚生年金にプラスして厚生年金基金という制度に入るケースもあります。

こちらは3階部分となります。

ただし、最近は業績が悪い基金が多く解散が多くなっていますね

。私が会社員時代に入っていたところも解散をして一時金をもらいましたね。

厚生年金基金がいつ、いくらもらえるのかは厚生年金基金の規約などに記載されていると思いますので確認してみてください。

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確定給付企業年金

確定給付企業年金も会社によってあったりなかったりします。こちらは3階部分となります。

確定給付企業年金は名前のとおり、将来もらえるお金が確定している年金制度です。

ただし、この制度は将来会社が払う金額が確定しているので運用がうまくいかなければ会社の持ち出しが多くなってしまい問題が多くありました。

私が会社員時代に入っていたところも運用がうまく行っておらず、不景気のころ多数のリストラを出した影響もあり年金資産が残っておらず決算書上かなりのお荷物になっていましたね。

そういう状況のため確定給付企業年金を辞めたり、企業型確定拠出年金へ移行する企業が多かったりしますね。

確定給付企業年金がいつ、いくらもらえるのかは会社の就業規則やその別表などに記載されていると思いますので確認してみてください。

企業型DC(確定拠出年金)

企業型確定拠出年金も3階部分となります。

こちらは拠出が確定している(会社が出す金額が確定)制度です。運用は各個人の自由、つまり、自己責任となります。

会社のリスクが減ることから人気がありますね。

また、最近はマッチング拠出といって会社が拠出してくれる掛け金にプラスして自分で払うこともできる制度を導入する企業も増えています。

さらに選択制確定拠出年金といって企業型確定拠出年金に入るのか今その拠出分を給料としてもらうのか選択できる制度なんかもあります。

このあたりはかなり複雑ですから自分がどの制度に入っていてどれくらいの金額が将来もらえるのかをしっかり考えておきたいところです。

企業型確定拠出年金はいくらもらえるのかは自分の運用次第となります。

ただし、会社が拠出する金額は決まっているはずですからそこからある程度予想することは可能なはずです。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は自営業の2階部分、会社員の3階部分(4階)となります。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は自分で掛け金を拠出して自分で運用する制度となります。最近は企業年金の代わりに会社がiDeCo代金を退職金の代わりに払ってくれるiDeCo+(中小事業主納付制度)なんて制度登場しました。

個人型確定拠出年金はいくらもらえるのかはこちらっも自分の運用次第となります。いつもらえるのかは60歳以降となっています。

税制上の優遇も大きくおすすめの制度ですね。詳しくはこちらを御覧ください。

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国民年金基金

個人型確定拠出年金(iDeCo)と同じく自営業の2階部分となるのが国民年金基金です。

こちらは会社員の方は加入できません。

国民年金基金は自分で掛け金を拠出して決まった金額を老後にもらうことができる年金制度です。

個人型確定拠出年金(iDeCo)と同じく税制上の優遇もあります。

国民年金基金は個人型確定拠出年金(iDeCo)と合わせて枠内(最大月68,000円)で加入することができます。

枠内なら両方併用も可能です。

ただし、付加年金に入れない、準備金が不足しているなどデメリットも多い制度ですから個人的には個人型確定拠出年金(iDeCo)の方をおすすめしますね。

詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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国民年金基金とは

国民年金や厚生年金は受給開始年齢を繰下げ、繰上げすることが可能

年金は基本的には65歳からの受給となります。

しかし、本人の生活による60歳〜70歳まで受給開始年齢を任意で変更する制度があります。

ただし、何歳まで生きるかを前もって知ることはできないため、年金受給年齢をいつにするかは慎重に検討しなくてはなりません。

自分があと何年生きられるかの予想は下記記事を御覧ください。

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繰上げ

会社によってはまだまだ60歳定年としているところも少なくありません。5年間他に仕事をしなければ収入がなくなってしまいますよね。それを防ぐ意味もあり、繰上げといって60歳から65歳未満のあいだであれば、自分で決定したタイミングから年金を前倒しで受給できる制度が用意されています。ただし、繰上げをするともらえる年金は減額されてしまいます。

計算の仕方は下記の計算式に当てはめて計算します。

減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数

簡単に言えば1月に0.5%減額するってことになります。例えば60歳から受け取りを開始すれば1回の受給額は30%減額したものとなります。

繰上げについて詳しくは下記記事をご覧ください。

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繰下げ

繰上げとは逆に年金受給開始年齢を遅らせることもできます。

繰下げをすると年金額を増やすことができます。

70歳まで繰下げた場合には、82歳以上生きることができれば繰下げをしたほうが年金の受取総額は増えますね。

ある程度の蓄えがあったり、老後にも収入がある方はこちらを選択をするとよいでしょう。

年金の繰り下げによる効果は下記の計算式でわかります。

増額率=(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)×0.007

簡単に言えば1月遅らせると0.7%増額するってことになります。例えば70歳から受け取りを開始すれば1回の受給額は42%増額したものとなります。

繰下げについて詳しくは下記記事をご覧ください。

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65歳前から受け取れる厚生年金について知っておこう

年金受給の年齢を考える時にもう一つおさえておかなければならない制度があります。

それが条件を満たした場合に65歳前から厚生年金を受け取れる厚生年金についてです。それは特別支給の老齢厚生年金です。

簡単に言えば年金がもらえる年齢が60歳から65歳に引き上げられた際に導入された暫定的な移行期間用の制度です。

そのため条件を満たした方だけが対象となりますし、生年月日、性別によりいつからもらえるのかの条件も異なります。

対象となるのは以下の条件を満たしている必要があります。

○男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと。
○女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと。
○老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること。
○厚生年金保険等に1年以上加入していたこと。
○60歳以上であること。

ポイントは男性と女性で生年月日の要件が違うところですね。

特別支給の老齢厚生年金はかなりややこしい制度ですから詳しくはこちらの記事を御覧ください。

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特別支給の老齢厚生年金解説

年金は実際いくらもらえるのかを知る

受け取れる年金は掛けてきた厚生年金の金額によって変わってきます。


ねんきん定期便を確認する

定期的に送られてくるねんきん定期便(年金定期便)を見ればある程度のことがわかります。

ただし、ねんきん定期便は今の現状での金額しかわかりませんので今後の部分については自分で考える必要があります。

ねんきん定期便の見方はこちらの記事を御覧ください。

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年金定期便の見方

ねんきんネットでシュミレーションする

日本年金機構が運営する「ねんきんネット」で将来受け取れる年金の見込額をシュミレーションすることができます。

前述のねんきん定期便に記載されたアクセスキーを利用すると手続きができますよ。

>>ねんきんネット

ねんきんダイヤル

ネットがあまり使わない方などは電話で教えてくれる年金ダイヤルがおすすめです。

「ねんきんダイヤル」(0570-05-1165

街角の年金相談センター

また、各地区に全国社会保険労務士会連合会が運営する年金相談センターが設置されています。

社会保険の専門家の社会保険労務士が対面による年金相談を行っています。

ネットや電話ではちょっとという方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

他の人は年金をいくらもらっているのか

他の人がいくら年金をもらっているのかは下記記事を御覧ください。統計データで知ることができます。

特に国民年金のみの自営業の人は老後資金を考えておかないと厳しい状況になってしまうのがわかると思います。

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年金はいくらもらえるのか

今後は年金財政はどんどん厳しくなる可能性が大きい

なお、今後もらえる年金の金額は大きく変わる可能性がありますのでそれらを加味して検討して上げる必要があります。

詳しくは下記の年金財政検証について御覧ください。

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年金積立金枯渇?

年金の受給開始年齢は総合的に考えることが重要

年金の受給開始年齢がいつがよいのかは前述のように人により異なります。

それは蓄え、今後の収入見込、もらえる年金額、入っていた制度、いつまで働くか、何歳まで生きられるかによるからです。

例えば60歳で退職。再就職しない、特別支給の厚生老齢厚生年金がもらえない方がiDeCoに加入していた方としましょう。

iDeCoは60歳で受け取ることができます。それで65歳まで生活できるならば繰上げをせず65歳からもらい始めればよいでしょう。

それでも生活に余裕があるならば繰下げをすれば将来もらえる年金は増えるはずです(長生きすれば)

まずは自分の各種年金を一度整理して考えてみることが大事ですね。

まとめ

今回は「年金受給年齢は何歳がベストなのかを考えてみよう。」と題して年金関連の記事をまとめてみました。

日本の年金制度はほんとうに複雑です。

社会保険労務士、年金アドバイザー、ファイナンシャルプランナー、社会保険事務所の方ですら資料を見ないと理解できないなんてことも普通にあります。

年金受給年齢を考えるときはまずは自分がどんな年金制度に入っていて、それぞれいくらもらえるのか、どんなルールになっているのかを整理して考えましょう。もし難しければ前述したねんきんネット、年金ダイヤル、街角の年金相談センターを活用するとよいでしょう。

もらえる年金を増やす方法はこちらを御覧ください。

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