2025年5月29日、NTTドコモによる住信SBIネット銀行のTOBとNTTドコモの親会社NTTとSBIホールディングスの資本業務提携が発表されました。
ネット上では住信SBIネット銀行の改悪を心配する声、TOB価格が安いことに対しての不満などが蔓延してましたね。
今回はTOBに参加しないとどうなるか?というところを中心に見ていきたいと思います。
改悪リスクと乗り換え先についてはこちらの記事でまとめておりますので合わせてご覧ください。

住信SBIネット銀行TOBの概要とスケジュール
まずは今回のTOBの概要から見ていきましょう。
買付主体:株式会社NTTドコモ
買付価格:1株4,900円(5/29終値比+23%)
買付期間:2025年5月30日 (金) 〜 7月10日 (木) の30営業日
今後の姿:TOB成立後はドコモ65.81%・三井住友信託34.19%体制。住信SBIネット銀行は連結子会社化され、最終的に上場廃止予定と発表されています。
なお、TOBは公式には「応募推奨」ですが、すべての株主が応じる義務はありません。
では “TOBに参加しない” とどうなるのか――ここからが本題です。
TOBに応じないとどうなる?5つのステップで理解
まずはTOBにに参加しない場合のステップをみておきましょう。
ステップ | 時期のめやす | 株主が受ける影響 |
---|---|---|
① TOB期間終了 | 7/10 | 株価はTOB価格近辺で推移しやすいが流動性が低下 |
② TOB成立可否判定 | 7月中旬 | 成立→ドコモ子会社化へ/不成立→株価調整 |
③ 上場廃止手続き開始 | 最短9月 | 市場で売買できるのはここまで |
④ スクイーズアウト(少数株主排除) | 上場廃止後数か月 | 強制キャッシュアウトか株式併合で売却を迫られる可能性 |
⑤ 金銭交付・税務処理 | スクイーズアウト実施時 | 確定申告が必要、損益通算の制限が生じることも |
スクイーズアウトとは(少数株主排除)
スクイーズアウトとはTOB後に残った少数株主を“まとめて買い取る”仕組み。
株式併合や株式等売渡請求など複数の手法があり、価格は概ねTOB価格と同水準に設定されます。ただし
- 手続き完了まで数か月〜1年近く待たされる
- 価格への不服申立ては可能だが、弁護士費用等を考えると現実的ハードルが高い
というデメリットがあります。
ちなみにNTTドコモがNTTにTOBにされた時は2段階買収に関する事項と株式併合が示されていました。
簡単に言えばTOBに応募してくれなくても法律に則って買取諦めませんよってことです。
住信SBIネット銀行のTOBについてはまだ詳細がわからないところがありますが、同じグループがTOBする話ですから同様の事項が示されている可能性は高いでしょう。
NTTドコモのTOBのときの話について詳しくはこちらの記事を御覧ください。

TOBに「参加しない」メリット3つ
まずはTOBに参加しないメリットです。
課税タイミングを先送りできる
今年度すでに大きな譲渡益がある人は、来年以降に税負担を繰り延べ可能となります。
配当(みなし配当)と譲渡益の“損益通算”が狙える
スクイーズアウト手法によっては配当扱いとなる部分が発生し、法人株主なら損金算入メリットが出るケースもある(税務要確認)。
TOB価格以上を獲得できる余地
たとえば株式併合に反対し「買取価格決定の申立て」を行えば、裁判所が再算定する可能性があります。
過去には実現したケースも。
ただし費用・時間がかかりますし、結果の不確実性は高いです。
TOBに「参加しない」デメリット5つ
基本的に私はよほど条件が悪くなければ今回のような上場廃止を伴うようなTOBには参加したほうがよいと思っています。
それは参加しない場合のデメリットが大きすぎるからです。
具体的に見ていきましょう。
流動性が急低下
まず、上場廃止までの売買高は日を追うごとに薄くなり、想定より安値で売らざるを得ないケースもあります。
上場廃止してしまうと売るのはさらに困難に。
ちなみに私はライブドアとライブドアマーケティングは上場廃止後も株を持ち続けていましたね。
その後の展開はこちらの記事を御覧ください。

キャッシュ化まで長期化
スクイーズアウトされるにしても完了は早くて年末〜来春です。
投資金額によっては資金拘束リスク、資金繰りを考える必要がありそうです。
価格プレミアムは限定的
近年の事例ではTOB価格≒スクイーズアウト価格が大勢。
追加上乗せを狙う“妙味”は乏しいです。
かなりの大株主なら対応もありそうですが・・・
株式買取価格決定の申立て(会社法172条等)で不服を申し立てることができますが、裁判コストと時間は要覚悟。
税務処理が複雑化
上場廃止銘柄の売却は特定口座年間取引報告書に載らず、確定申告対応が必須になります。
確定申告に少々手間暇がかかります。
議決権の意味がほぼ消滅
65%超を握られた時点で、少数株主の議案可決・否決への影響力は事実上ゼロ。
純投資リターン以外の魅力は失われます。
TOBに参加する、しないの判断フローチャート
前述したように基本的にTOBは参加したほうが良いと思いますが。
しない場合も含めて判断するポイントをフローチャート式で見ていきましょう
含み損益は?
含み益が+20%以上 → 税繰り延べを優先する考えもあります。不参加も一考の余地があります。
含み損 or 小幅益 → 手離れ&流動性、手間暇を優先すると参加推奨ですね。
TOB価格より高い市場価格で推移するなら早めに売ってしまうというのも良いでしょう。
売却資金の使い道は決まっている?
決算期内に他銘柄へ再投資予定 → 参加で早期キャッシュ化したほうがよいでしょう。
長期待機資金でOK → 不参加し、来期以降の税制・相場を見て動くという選択肢も
税務・法務コストを許容できる?
顧問税理士や弁護士費用を負担できる → 不参加+価格交渉戦略もありです。
ただし、その分野に強い専門家でないと意味はないかもしれません。
コストを最小化したいなら参加一択ですね。
まとめ:“参加しない”は戦略だが、放置はリスク
今回は「住信SBIネット銀行のTOBに“参加しない”という選択肢はあるのか?」と題して住信SBIネット銀行のTOBについてみてきました。
基本的には今回のようなTOBは事前に売ってしまうか、TOBに参加したほうがよいケースがほとんどです。
ただし、キャッシュ化タイミングと税金、手間暇を天秤にかけ、目的に沿って判断を
ちなみにNISAで保有している場合でもTOBは課税対象となる可能性があります。
下記記事を御覧ください。

本記事は投資判断の参考情報であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終判断はご自身で。必要に応じて税務・法務の専門家へご相談ください。

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